2004年04月05日

KALEVALA tribute

担当した展覧会の解説記事です。
20040403朝日新聞宮城版朝刊に掲載

「ヒーロー伝説にささぐ」

copyrights SASAKI, Kazuyoshi.

「ヒーロー伝説にささぐ」
(原題:『カレワラ』トリビュート)
せんだいメディアテーク学芸員 笹木一義


この場面は『カレワラ』神話終盤の大戦を描いています。主人公ワイナミョイネン率いる「カレワラ」の軍勢に、巨大な鷲に姿を変えた女主人ロウヒが率いる「ポホヨラ」の軍勢が迫ります。富をもたらす神器「サンポ」は激しい争奪戦のすえ海中で粉々になり、その破片が流れ着いた「カレワラ」は物語終盤に再び繁栄をむかえます。
さて、前回の解説で主人公ワイナミョイネンは生まれた時から700歳を越えた老賢者とありましたが、この作品の中にその老英雄はいるでしょうか。船上で見得を切っているのはロックスター、エルヴィス・プレスリーです。
この作品はタイトルのとおり、過去の作品をモチーフとしています。本展の出品作品の中には、フィンランドの国民作家といわれるアクセリ・ガッレン=カッレラが1896年に描いた同じ構図の木版画の作品があり、そこには船上で勇ましく剣を振るう老勇者が描かれています。
標題の作品を描いたマルック・ラークソは、単に『カレワラ』神話のパロディーを描こうとしたのでしょうか。ワイナミョイネンの得意技は歌。プレスリーも歌をもって人々を興奮させました。そしてまた1970年生まれのこの作家は、20世紀のヒーロー・プレスリーを、100年前の作品の構図に緊張感を保ちつつ入れこみ、さらに太古から伝承された神話の中に対峙させています。
この四つの時間軸を貫いて表現されたこの作品をみるときに、単なるパロディーではなく、各々の時代のヒーローを見つめてきた人々への「トリビュート(敬意を捧げる)」作品と受け取ることができるでしょう。

作品キャプション:マルック・ラークソ 「サンポの防衛-アクセリ・ガッレン=カッレラの作品(1896年制作)による」 1999年

投稿者 kazy : 2004年04月05日 10:07 | トラックバック

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